後世に伝え残したい記憶〜プロ野球、南海ホークス・ジョー・スタンカ

シリーズは南海先勝のあと阪神が連勝し、第4戦の南海の勝利で2勝2敗のタイに持ち込んでから第5戦、阪神が勝ち先に王手をかけるという展開となった。


阪神3勝2敗で迎えた第6戦。
南海の先発はシーズンもエースとしてチームを牽引し、第1戦でも完封勝利を挙げている、スタンカ。


ここでスタンカ、このシリーズ2回目となる完封をやってのける。
今シリーズ3試合目の先発試合であった。


続く第7戦は、東京五輪の開会式の日と重なってしまった。


五輪に合わせ、プロ野球も開幕を早め日程を調整した訳であるが、セントラル・リーグの優勝争いが縺れ、シリーズの開幕も遅れた上、ドーム球場もない時代でこのシリーズ中も雨で1日順延となっていた。


なおこのシリーズ、全試合ナイターで行うことは、最初から決まっていた。


双方3勝3敗の第7戦。
南海の先発の予想が難しいと言われた中、鶴岡一人監督は前日完封したばかりのスタンカを連夜の先発に指名した。


スタンカはこの起用に応え、見事・天晴れ2日連続の完封劇をやってのけた。


日本シリーズで、2試合連続完封はあるが、2日連続の完封はプロ野球史上初のことで、おそらく今後もこれは、破られない記録ではないだろうか。


このシリーズ、3完封で3勝と大活躍のジョー・スタンカは、文句なくシリーズMVPに輝き、南海ホークスは、5年ぶりに日本一となった。

全国民の関心が東京五輪に向けられていた昭和39年の日本選手権シリーズは、全体的に――とりわけ阪神甲子園球場での――観衆の数が少ない中ではあったが、ジョー・スタンカの活躍が特に目立ったシリーズであった。